尊厳死宣言公正証書

高齢化社会。令和3年の死亡者数は143万9809人でした。厚生労働省が平成28年に発表した「人生の最終段階の医療における厚生労働省の取組」によると、死亡者数は今後も増加傾向と予想されるそうです。

2015年と2040年の死亡者数を見ると実に36万人の差が出ると推計されています。この人口減少、高齢化が進む日本では「リビングウィル」という言葉が注目されるのも当然のことかも知れません。

「リビングウィル」を日本語にすると「生前の意思」という意味です。終末期医療を迎えつつある方がまだ自分の考えをまとめられたり、意思を表示できるうちに延命措置などに関して自分の考えを書き残しておくことです。

そして、このリビングウィルを公証人の関与のもとより強固な意思表示にしたのが「尊厳死宣言公正証書」です。今、リビングウィルや尊厳死宣言公正証書に注目が集まっています。

尊厳死宣言公正証書とは?

尊厳死宣言公正証書について、日本公証人連合会の説明を引用します。

「回復の見込みのない末期状態の患者に対して、生命維持治療を差し控え、または中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせることと説明される。」そうです。

ここで注目したいのは「人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせる」という文章です。ここには患者への生きている限り最後まで全力で治療をするという姿勢に対する疑問が投げかけられています。

単に延命措置だけの意味合いしかもたない治療であれば、患者自身の利益にならないばかりかむしろ苦しめることにつながってしまい、それは患者の尊厳を傷つけるのではないかと考えられるようになってきたのです。

そこで過剰な治療や単なる死期の引き延ばしを止めることを「尊厳死」と呼ぶようになってきたのです。リビングウィルや尊厳死公正証書遺言は本人の想いを実現するほか、親族などの近親者の精神的、金銭的に多大な負担をかけてしまうことを防いでいく狙いもあります。

ただ尊厳死といっても、医療現場は必ずしも尊厳死宣言公正証書に従わなければならないとは考えられておりません。そもそもどんな治療が延命措置に該当し、どの治療ならば延命措置以外の治療なのかもはっきりと定義できるわけではありません。

こういう不確定要素はいかに公正証書といえども残ってしまいますが、それでも医療現場では9割以上の医師は尊厳死を許容しているとのデータもあります。こういう状況を踏まえると、延命措置はほどこしてほしくないと考える人にはリビングウィル、若しくは尊厳死宣言公正証書は有効な手段であると言えます。

そして自分で書いただけのリビングウィルと比較すると、公証人が関与して作成された尊厳死宣言公正証書の方が、より本人の意思がそこにあると認められやすいでしょう。

尊厳死宣言公正証書の作成段取り

① まずは原案を作成する。

公証役場が関与するといっても、全ての文章を1から作ってくれるわけではありません。原案は自分たちで作成する必要があります。まずは原案を作成し、それをメールなどで公証役場に送ります。

② 公証役場と打ち合わせ、文案調整

原案を基に作成する公正証書の文言を調整していきます公正証書は、公証人が作成する形の文書のため公証人にも責任が生じます。そのため、原案がそのまま公正証書になるわけではありません。表現、文言などを公証人とやりとりしながら調整する必要があります。

③ 尊厳死宣言公正証書の作成

文案が全てかたまったら、公証人の面前で公証人の前で署名・押印し尊厳死宣言公正証書の完成です。体調が優れないときなど、出張してもらうこともできます。

意思表示がしっかりできるうちしか作れない

尊厳死を宣言する書類を作るのに、本人の考えを明確にできない状態で作成するわけにはいきません。そのため、尊厳死宣言公正証書を作成できるのは、公証人に対してきちんと意思表示できる体調が保たれているときまでです。おのずから早めに作る必要があります。作成する際はこの点を念頭においておくことが重要です。

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