おひとりさまの終活

厚生労働省が「50歳時点での未婚率」の統計を出しています。

2015年時点で男性は23.4%、女性は14.1%です。1985年時点では男性が4.3%、女性が3.9%だったそうなので30年前と比べて6倍くらいになっています。そしてこの数字は徐々に上がっていくと予想推定され、2040年には男性が29.5%・女性が18.7%になると推計されています。

未婚率は「一度も結婚したことのない人」の割合のことなので、50歳まで結婚してない人の中の多くはお子さんもいないと一応予想できます。もちろん、お子さんがいないご夫婦や結婚経験はあるもののお子さんが誕生しないまま離婚なされる方もたくさんいらっしゃいます。

こういうことを合わせて考えるといわゆる「お1人様」はどこにでもいる普通の人です。普通ではあるのですが、終活や相続の面から考えるとやはりお子さんがいるかどうかで違ってきます。色んなご家庭があるとはいえ配偶者や子どもは、終活をする上でかなり近しい関係といえます。

しかし配偶者や子がいない場合の相続人は自分の兄弟姉妹だったり、甥・姪だったりします。兄弟姉妹も大人になると疎遠になるのも普通ですし甥・姪は子どものころに会っただけということも珍しくありません。

そして兄弟や甥・姪となると人数もたくさんいたりします。「近しい人がいない」「将来相続権のある人の人数が多い」これがおひとりさまの終活・相続の特徴です。

このページではお子さんがいない方や、お子さんがいても疎遠だったり、迷惑をかけたくないという方向けに終活をどう進めるか紹介したいと思います。

おひとりさま終活で考えたいこと

おひとりさまが老後に向けて考えておきたいことはいくつかあります。しかし一番最初にくるのは「老後自分がどんな生活を望んでいるのか」というのをイメージすることです。

例えばワンちゃんが大好きでどうしても今一緒にいるワンちゃんと生活したり、あるいは今は犬はいないけど将来は絶対犬と生活したいという方。そうすると、犬がいる状態で自分がお世話をできなくなる時の対応をどうするか?というのが大きなテーマになります。

例えば長期で預かってくれるペットホテルを探すのか、あるいはペットと一緒に入居できる老人ホームを探すなどの手段が見えてきます。そしてこの手段を取った場合どれくらい予算がいるのか、資金計画は大丈夫なのかが考えられるようになってきます。方向性だけでも「自分がどういう生活をしたいのか?」が見えてくると具体論に落とし込みやすくなります。

おひとりさまの特徴は「まわりが考えて動いてくれる」が期待しにくいところです。同居している家族がいるならほっておいてもあなたが犬が好きなのは知っているでしょう。しかしおひとりさまは、それは知っている人がいないかも知れません。いたとしても、やはり誰かのために介護施設を探したりすることは探す人も非常に大きな責任を感じるものです。

そのため、犬がいる施設など特徴のある判断をするよりも、家の近くだったり費用が安かったりと無難な判断になりがちなのは仕方のないことです。

自分の意思表示をしっかりしておかないと、自分が望む生活が送れなくなってしまうことがおひとりさまの老後や終活の特徴です。

認知症への備え

認知症による資産凍結に備える必要性が大きいのもおひとりさまの特徴です。

手段は大きく2つ。任意後見と信託です。任意後見は認知症になった後の財産管理を任せる人を元気なうちに選んでおく制度です。この人を先に選んでおいて、どういう生活を送りたいか元気なときに伝えておくことで、あなたの希望がかなう可能性がグっと上がるでしょう。

信託はある特定の財産の管理や処分を任せることができる制度です。例えば自宅売却の権限を認知症になったときに備えて誰かに任せたりすることができます。任意後見よりすぐれた点は2つあり、1つは第三者の介入を許さないこと。任意後見の場合は認知症になると制度の仕組み上「監督人」という立場で第三の介入を許します。

監督人は実際に財産管理をする「任意後見人」を監督する立場で裁判所が司法書士・弁護士などから選びます。あなたからすると見ず知らずの人がなることになりますし、その人に報酬の支払いも必要になります。これが心理的に受け入れられない場合は信託で対応していくことになるでしょう。

そしてもう1つは「財産の売却の権限」です。任意後見も信託でもあなたの財産なので売却するときは慎重に考えなければなりません。ですがある財産の管理・運用そして処分を任せる信託の方が、立場上、財産の処分の判断がしやすいです。売り時などを適切に見極められてより高値で売却するという目線で考えれば、信託の方が向いているといえます。

しかし、信託は財産を管理するため、介護施設の契約などをしてもらうには向かず、任意後見で対応していくことになります。任意後見も信託もそれぞれ特徴があるので、併用される方もいらっしゃいます。

死後手続き、葬儀、相続への備え

おひとりさまの課題として、みなさまが一番最初に思い浮かぶのが葬儀や相続の問題なのではないでしょうか。葬儀の形式や宗派に希望があれば、当然周囲の人に伝えておかなければ希望どうりになりません。

また自分が管理しているお墓があれば墓じまいをどうするのかも大きなテーマの1つです。そして、希望があったとしてもそれを実行してくれる人がいるかどうかも大きなテーマです。

おひとり様によく活用されるのは「死後事務委任契約」。これは自分が亡くなった後の手続きをしてもらうよう、司法書士などの専門家と契約をしておく制度です。こちらを利用すればお葬式や埋葬の対応、入院費や施設費用などの支払い、遺品の整理などを対応してもらえます。

そしてもう1つ考えておかなければならないテーマが相続。おひとりさまの場合は相続人が大人数になったり疎遠な人になったりしやすいので、できれば遺言を残しておきたいところです。お世話になったりお付き合いがある人に多めに相続してもらったり、あるいはなにか自分が興味のある活動をしているところに遺言で寄付することもできます。

おひとりさまであるおじさん、おばさんに終活して欲しい!

おひとりさまの終活は、相続権のある親族の方にも大きく関わってきます。

現実問題として本人の具合が悪くなれば行政や介護施設から連絡を受けたり、葬儀の対応をしたり、相続手続きしたりと関係することがたくさんあるからです。できれば本人に遺言をはじめ諸々の意思表示や手続きをしてもらった方が、判断に迷ったりしにくくなります。

ですが本人になかなかその気がない・・・。そんなときは、まずは本人に「老後にどんな生活がしたいか?」と聞いてみてそこから話を掘り下げてはいかがでしょうか。「この人は私のためではなく自分が困りたくないからいろいろ言ってくるのだな」とおじさん、おばさんが感じてしまったらなかなか行動力も出にくいと思います。

あくまでおじさん、おばさんにいい老後をおくって欲しいためという気持ちが伝わることが大事です。そのためには「おじさん、おばさんはどうしたい?」というスタンスが良いと思います。

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