持ち家・不動産の整理

平成30年時点での日本の空き家の総数は848万9千戸。空き家が850万近くあるのです。これは全国の住宅の中の13.6%に当たります。

100件家があったらそのうち13件以上が空き家。相続した両親の自宅がそのまんま空き家で残ってしまうのも他人ごとではありません。高齢者が持ち家に住んでいるのはいいこと。ご本人たちの安心感につながります。

しかし安心感をもたらす自宅不動産がやがて空き家になってしまうと維持・管理費用がかかるだけの厄介者になってしまう。だけれどもこれは準備、段取り、制度の活用をしっかりすることで防ぐことができる。空き家をプラスの相続財産にしていくのは知識を得て段取りを整理することが必要です。

親の持ち家が空き家になってしまう最大の原因「共有」

空き家が空き家のまま放置されてしまう最大の理由は「共有」だと考えています。「不動産の共有はやめましょう」これは弁護士さんや司法書士は特に強調するところです。しかしなぜ共有は空き家の原因になるのでしょうか。大きな理由は「不動産の売却は基本的に全員の同意が必要であること。」です。

名義が1人であればその1人が売却をしようと思えば持ち家を処分できます。しかし、もし兄弟2人で共有していたら2人。3人で共有していたらその3人全員が売却しようと思わなければ売れません。しかし、単に共有なだけで放置空き家になってしまいわけではありません。

問題は「共有のままダラダラと長期間時間が流れてしまうところです」これが不動産相続で一番怖い。相続後、時間が経つことで考えるのも面倒になり、そのまま固定してしまうのです。

ところで、なんとか一部の人が反対していても不動産の権利を売れないものなのでしょうか?法的には売れます。そして、こういう共有持分を買い取る不動産業者もある。しかし、やはり価格はガクッと下がります。「不動産を売却した」という価格にはならないでしょう。「自宅を何とか処分した」くらいの金額になってしまいます。

また親の自宅が処分できても、兄弟との付き合いがなくなるわけではありません。いくら反対していたとしても、自分を取り残して持ち家処分をしたら反対していた兄弟は怒るでしょう。

もう付き合わないと割り切るのも手ですが自宅不動産以外にも未分割の相続財産があったらそうもいきません。共有にしない、あるいは共有にするにしても売却や信託などの出口を決めておく。これが大事です。

あなたの持ち家が「特定空き家!?」空き家を巡る「法律」

2015年。空き家特別措置法が制定されました。この法律の中で「特定空き家」なる概念が登場します。

「特定空き家」とは、倒壊の危険があったり草木がボーボーになったりしている空き家の中で行政が指定した空き家のことです。

指定されてしまうとどうなるか。行政からちゃんと管理するよう指導される、固定資産税の減免措置が受けられなくなって税金が上がる、更に行政に勝手に建物を解体されて費用は請求されるなど様々なデメリットが生じます。

不動産は持っていればなんでもいいというわけではありません。あなたの持ち家が空き家となってボロボロになってくると、このように不動産が負動産になってしまうこともあります。空き家となっている不動産の所有者にとっては地獄ですが、周囲の人の迷惑を考えると仕方のない部分もあるかも知れません。

この空き家特別措置法。2023年に改正もされました。改正により「特定空き家」になる手前の概念「管理不全空き家」が取り入れられ、空き家の状況がひどくなる前に行政が介入しやすくなりました。一連の動きから、国の空き家撲滅に対する本気度が伺えます。

実際に法律の施行から令和2年度末までで27,322件の空き家が特定空き家に指定されてしまいました。親の自宅であって自分が住んでいたわけでもない家がこんな目にあったら、さぞや理不尽に感じるでしょう。

しかし、法律も空き家所有者であるあなたに「鞭」を打つだけではありません。早期売却したらきちんとメリットも用意してあります。それがいわゆる「空き家特例」。これがデカぃ!該当すると数百万の差が出るかも知れません。

不動産を売却すると税金がかかります。ただ全てのケースでかかるわけではなく、様々な税制上の特例を利用するなど対応することで、結果として納める金額がグンと少なくなったりゼロになったりする場合も珍しくありません。

空き家特例もそんな制度の1つ。相続若しくは遺贈で取得した空き家を売却し、かつ売却した空き家が「一定の要件」に該当すると譲渡所得の金額から3,000万円が控除される制度です。3,000万円が控除されるとどうなるのか?売却価格が3,000万円なら3,000万-3,000万で所得ゼロです。なので税金かかりません。

では空き家特例を使わないとするとどれくらいかかるのか?5年以上保有した不動産の税率は2割とお考えください。そうすると、3,000万円の2割で600万円にもなってしまいます。実際には譲渡した価格から経費も引けますし、取得原価も引けます。

こんな単純な話ではなりませんが、やはりケース次第では大きな差が出ます。では「一定の要件」とはなにか?これが細かくたくさんあるのですが代表的なものをご紹介します。

1つは相続若しくは遺贈で取得したものであること。やはり親の自宅を相続してそのまま空き家になるケースが多いのでそれに対応する趣旨です。そして昭和56年5月31日以前に建築されたものであるもので区分所有建物でないこと。区分所有建物とは要はマンションのこと。

空き家を減らしたいわけなので、誰かの持ち家として昔に建てられた家をターゲットにしていく主旨です。そして、「相続してから3年を経過する年の12月31日までに譲渡していること」相続してから約3年以内にしか使えません。

これは売却にふんぎりがつかないでいる他の相続人の方への説得材料になるのではないでしょうか。そして、建物は耐震基準を満たしているか取り壊してから売却すること。年代からして耐震基準を満たすのは厳しいでしょう。現実には取り壊してから売却することになると思います。

このほか、様々な要件があるのできちんと条件を満たしているか確認をする必要があります。また「要件を満たすように段取りを取る」目線も必要。例えば「取り壊してから譲渡」する必要があるので、売却した相手方に取り壊してもらうような契約スキームではこの特例が使えなくなってしまいます。

こうならないようにするには知識のある不動産会社や税理士さんと連携し、税務申告から逆算をして段取りを取る必要があります。

自宅を空き家にしない!有効対策をご紹介します。

あなたの大切な自宅を、空き家にしないためにはどうしたらいいのでしょうか。若しくはあなたの親の自宅を空き家にしないためには?

キーワードは「統一」。統一すべきは「不動産の名義」か「相続人の意思」。どちらかを統一できれば、自宅の空き家化防止にグっと近づきます。ここでは自宅の名義人たる終活世代の方と、やがては親の持ち家を相続する次の世代の人たち双方の目線にたってかえっていきます。

終活世代からみた空き家防止対策

1 遺言作成

不動産が空き家になってしまう最大の要因は「共有による権限の分散」です。所有権が分散し、共有状態になると誰か1人と連絡がつかなかったり、あるいは1人が売却などに反対するとそれだけで事態が凍結し、持ち家が空き家へと変わっていってしまいます。

逆に権限を集中できれば、空き家化を防止できるのです。状況が許すのであれば、遺言で誰に自宅を相続させるのか決めておきましょう。また決め切れない場合は、「売却してそのお金を相続人が分割して受け取る」趣旨の遺言を残すことも考えられます。

2 エンディングノート

遺言が残せない場合もあります。頭では分かっていても気力がわかなかったり、どうしても遺言の面倒な事務手続きをする気になれなかったりするかも知れません。そんな時には、エンディングノートやメモでも「自分に遠慮せず売却して構わない」とお考えを残しておかれるのはいかがでしょうか。

親の自宅となると、相続人にとってはそのまま自分たちが生まれ育った実家であることも多く、売却するのが忍びないと考える方もいらっしゃいます。またあなたにお子さんがいない場合、あまり付き合いのない甥や姪が相続人になることもあるため、もしかしたらあなたの考えがどこにあったのか判断がつかず、そのまま時間が流れて空き家になってしまうかも知れません。

あなたが自宅を売却してもいいと思っていることが伝わったら、例え法的な拘束力がなくともそれによって相続人の意思が統一され、1つの方向に向かって行動しやすくなるかも知れません。

相続した世代からの空き家防止策

終活世代の生前から相談しておく

全員が一同に介せなくとも、また何となくの会話でも意味があります。将来は自分たちが相続すること、そして相続した不動産をどうすべきかは自分たちの課題になることを相続人同士で共有しておけると良いと思います。

事前に共有しておくことで空き家を放置するのは維持・管理や固定資産税の支払い等のリスクがあることをみなさんが認識しておくことができます。また相続発生前に考えることで感情的に反応せず、相続人それぞれが合理的・客観的に物事を判断する一助になります。

欲を言えば相続した後どうするか、相続人同士の意思を統一しておきましょう。

法定相続分以上は主張しない

空き家防止の切り口に絞れば、法律上認められた相続分以上は主張しない方が無難です。相続人同士の食い違いは大体こんな感じでおきます。

相続人A「ずっと親の面倒は自分が見てた。亡くなったとたん権利ばかり主張するのはおかしいじゃないか」相続人B「本当は自分も手伝いたかったが声もかからなかったし、かけずらい雰囲気だった。ずっと相続財産を意識してそういう風にしてたんじゃないか」こういう風に食い違い話が大きくなってしまうのです。

これを防ぐ意味では、全員が法律で決められた相続分を相続すると意思統一できれば、問題はおきません。様々な思いがあるときでも割り切れるか・・。ここも意思統一のポイントになってきます。

keyboard_arrow_up

0368047353 問い合わせバナー 無料相談について