遺産承継・遺産整理

遺産整理には意外な落とし穴があります。例えば預貯金の払い戻し。相続した預貯金を実際に相続人の口座に入金するには、銀行での手続きが必要です。この時遺言書などがないと、遺産分割協議書などの書類に、相続人全員の実印が求められることが多いです。

そして、それぞれの金融機関が書類への押印も必要になり、どの金融機関に誰の押印をどの金融機関にするのか整理するだけでも大変。また、金融機関とやりとりをする方はだいたいのケースで自然と1人になるため、その方に事務的負担が集中します。

そして、ほかの相続人の方への案内がうまくできず、用意してもらう書類を間違ったりすると文句を言われてストレスがたまり、せっかく遺産分割の話し合いが済んだのにこの段階でケンカになってしまったりします。このように遺産承継の手続きは落とし穴がたくさん。でも、全体の流れを大まかにでも把握することによって大分スムーズになります。

遺産承継のおおまかな流れ

遺産承継はともかく全体の流れを把握するとスムーズです。おおまかな流れを把握していきましょう。特にポイントとなるのは「相続税の申告が必要かどうか」と「相続税の納付を相続した預貯金から支払う必要があるかどうか」です。

相続税の申告が必要で、かつ納付する相続税は相続した預貯金からする必要がある場合は、段取りよく進めて納付に間に合うように進めなければなりません。

①戸籍収集作業

遺産整理の第一段階として、相続人を確定しなければなりません。もちろん、相続される方はわざわざ調査せずとも家族関係は把握していることが多いですが、それを銀行などに証明する必要があります。

どうやって証明するのか?戸籍で証明していきます。基本的に亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍を集めます。そのほか、相続人の方の戸籍も用意しておきます。

②法定相続情報の作成

平成29年度からはじまった新制度「法定相続情報証明制度」。遺産整理でかなり役立つ便利な制度です。これは申請人が自分で相続関係を表す「法定相続情報」を作成して戸籍一式や住民票などと一緒に提出すると、提出した「法定相続情報」に登記官がハンコを押してくれます。これが便利。A4の紙一枚の法定相続情報を銀行などに提出すると、それで戸籍の代わりになります。

銀行が求める戸籍を全部提出すると6、7通になることが多く、兄弟姉妹や甥・姪が相続する場合は数10通におよぶ場合もあります。昔の家督相続時代の戸籍は載っている人の人数が多く自然と枚数も多くなるため、必要な戸籍を全部集めるととんでもない分厚さになることも珍しくありません。

これが紙1枚になるとかなり楽です。また銀行も戸籍の読み取りがいらないため、手続きにかかる期間も短くできます。銀行だけではなく、相続税申告や不動産の名義変更(相続登記)にも使える法定相続情報。

遺産整理のときには、みなさん利用するメジャーな制度となってきました。司法書士に相続登記と合わせて作成依頼すると効率的です。

③財産目録作成

戸籍収集と同時に走らせる作業が財産目録の作成。財産を一覧表にします。銀行から残高証明書を取り寄せて相続発生日、つまり亡くなった日の日付で作成します。

④相続税申告に向けての税理士さんとの打ち合わせ

これも戸籍収集や財産目録の作成と同時に走らせます。およその相続財産額を把握できたら、相続税申告が必要かどうか税理士さんにも相談しながら判断していきます。この判断を早めにしなければならない理由は相続税の申告期限。亡くなった日から10か月以内に納税しなければなりません。

10か月というと十分時間があるように思われるかも知れませんが、実際にはかなりタイトです。まず葬儀などを終えて本格的に遺産整理の手続きをはじめる段階でもう2か月くらい過ぎているのが普通です。そして、相続した預貯金が実際に相続人に振り込まれるのにも案外と時間がかかります。

遺産分割協議書などを銀行に提出してから更に数週間かかるため、もしも相続した預貯金から相続税の納付をする場合はスピーディー進める必要性が格段に増します。相続税の申告が必要かどうかで遺産承継手続き全体の流れに影響をおよぼすため、早めに把握しておきたいところです。

⑤遺産分割協議書作成

遺産承継の最重要作業ともいえる遺産分割協議。財産の細かいところまでの全てを掌握できないと正確な遺産分割協議書が作成できないため、協議書作成のためには財産目録作成などの準備が必要です。

もちろん、細かいことが分かってくる前の段階でも相続人同士の話し合いは進めて、全て把握したらすぐに協議書が作成できるとスムーズでしょう。

⑥銀行、証券会社などの手続き

協議書が作成出来たらいよいよ遺産承継の段階に入ります。遺産分割協議書によりどのように遺産を分配をするのか決まったので、後はその通りに手続きをとっていきます。不動産の名義変更からしても良いのですが、相続税の納付もあります。預貯金の手続きからとる方が流れとしては良いでしょう。

⑦不動産の名義変更

遺産分割協議書が作成出来たら、その内容どうりに不動産の名義変更(相続登記)もしていきます。法定相続情報を作成依頼した司法書士に合わせて依頼するとスムーズです。

⑧相続税の申告

遺産分割協議にて取得した財産に応じて、相続税を納付します。「うちはお金持ちじゃないから相続税は関係ないよ。」と思う方も多いかも知れません。

しかし、国はもしかしたらあなたのことをお金持ちと思って、相続税の納付義務を課してくるかも知れません。どういうことか?不動産です。亡くなった方の自宅は長い間そこに住んでいたため、相続人のみなさんに「資産」であるという意識があまり無いことも多いです。

しかし、相続税の計算をする上で不動産の価値評価の基準となる「路線価」の価格は意外と高いかも知れません。預貯金を少なくとも、相続税の申告が必要なことも珍しくありません。早めに税理士さんに相談して確認しましょう。

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