家族信託と事業承継

信託は会社の相続でも大活躍!

少子高齢化から来る老後の生活設計の難しさ。相続人の少なさや権利意識の向上がもたらす相続の難しさ。そして、世代を超えた想いの引継ぎ。これらを実現するため家族信託が注目されて久しいです。

信託は簡単に言えば誰かに財産の管理を任せる「契約」です。この「契約」の内容は幅広く自由に認められており、この自由度を活用して様々な問題に対処したり、未来への想いを実現したりすることが可能です。

そしてこの信託の自由度が活かされるのは、個人の相続だけではありません。会社の相続、つまり事業承継でも活かされます。それどころか、個人の相続と会社の相続を同時に対処しなければならない事業承継でこそ、より家族信託の自由度の高さが活かされ、家族信託の本領発揮ともいえます。

例えば、確実に特定の後継者に事業承継をさせたい、早期に創業経営者の希望する経営体制の準備・実現をさせる、相続による議決権の分散の防止、事業承継と同時に準備する創業社長の個人の相続におけるトラブル防止。このようなことに信託を活かすことができます。

信託と遺言、生前贈与との違い

会社経営において後継者の指定とは、「株の承継」とほとんど同義です。株を持っている人が会社のオーナーであり、仮にオーナー以外の人が代表取締役になっても、任期が来るたびに株主が株主総会を通じて同じ人を取締役にお願いするのかどうか判断していくことになります。

このように事実上の後継者指名の意味合いももつ「株の承継」。この株の承継にもいくつかやり方があります。生前贈与や遺言、そして信託。ここでは遺言による株の承継と信託による株の承継を比較していきたいと思います。

遺言は撤回できるが信託はできない

事業承継において信託にはあって遺言にはない重要な効果。それは、「撤回できない」ということです。遺言は遺言を書く人の意思表示。自分1人の意思表示で相手はいないのが法律上の建前。「単独行為」と法律上の用語では言われます。

相手はおらず、単独で行う行為なのですから気が変わったらやりなおして構いません。つまり遺言は何度でも書き直せるのです。

一方、信託は財産を任せる人「委託者」と任される人「受託者」の契約です。相手がいます。相手がいる以上、自分の気が変わったからといって勝手に変更することはできません。このように「撤回できない」ことが事業承継の場面では非常に意味を持ちます。

それも、プラスの意味です。遺言は撤回できてしまうので、仮に遺言に株を相続させると後継者が書いてもらっても、それはまだ確実とは限りません。撤回される可能性があるのです。

一方信託であれば契約であるため、撤回されるおそれはありません。後継者としてはもしかしたら株を引き継げなくなる懸念が払拭され、思い切り自由に伸び伸びと自身をもって仕事に取り組むことができる。そんな環境づくりにつながります

信託と生前贈与の違い

事業承継のやり方として、株を徐々に贈与していく「生前贈与」も考えられます。節税対策としては有名でポピュラーな方法である「生前贈与」ですが、大きな欠点になり得る特徴もある。それは節税の効果だけではなく、経営権まで後継者にうつっていることです。

当たり前ですが、株を贈与するということはその株のもつ「全ての要素」を後継者にあげるということです。株はなにも財産的価値だけではありません。「共益権」と呼ばれる会社の経営に参加する権利もあります。

株主として会社の株主総会で議決権を行使し、過半数を超える株を取得すると単独で取締役などの人事権も持ちます。創業社長としては自分もまだまだ元気だし、育成段階の後継者が経営権を持つのも心配。そういうときに信託を活用できます。どう活用するか?信託は財産を誰かに財産の管理・運用を任せる制度。

しかし、信託の財産を任せる人(委託者)と任せられる人(受託者)以外にも信託には様々な要素があります。任せる対象の財産を何にするか?株の配当金や不動産の賃料収入などその財産からの収益を受けられる人は誰か(受益者)。

信託もやがては終わりを迎えますが、どのような状況になったら信託契約を終わりにするのか?そして、信託の対象としていて財産を誰が引き継ぐ「権利帰属先」を誰にするか。これらも非常に重要な契約要素です。

具体例を落とし込んでみましょう。信託の対象財産を「株」、信託の終わる時期を「創業社長の亡くなるとき」そして権利帰属先を「後継者」としておけば、創業社長が亡くなった段階で後継者は株主となれます。そして財産を任せるのはもちろん株を持つ創業社長。そして任される人(受託者)も創業社長としておきます。

このように任せる人と任せられる人が同じ場合を「自己信託」と呼びますが、こうしておけば株の管理・運営も引き続き創業社長ができるため、経営権は創業社長が持つ状態を実現きます。

そして「受益者」。財産から利益を受ける権利がある人ですが、ここも後継者としておきます。税制上は、利益を受けられる状態ができたことで贈与された(みなし贈与)と考えていくことになるのが通常なので、株を譲渡して節税対策につなげながら経営権は保持していく。

そして後継者の立場から見ると信託の「契約スキーム」であることのメリット、「創業社長に勝手に撤回されない」という点も享受できるようになります。特にあまり業績が良くなかったなど株価が低いタイミングで実行できると、より効果的でしょう。

信託は様々な会社の「前提」と「得たい効果」に対応できる。ただし・・・

会社の状況はまさに千差万別。1つとして同じ前提の会社はありません。また当事者のみなさんも実現したい「状態」もそれぞれ。これも1つ1つオリジナルのものです。

そして、それに伴うみなさんの「感情」もそれぞれ。プラスの部分ももちろんありますが、不安や不公平感などのマイナスの感情もあるでしょう。家族信託のデメリットと言えばこの「マイナスの感情」が表に出てきてしまいやすいことがあります。

なぜか?信託は自由度の高い制度です。自由度が高いゆえに関係当事者のみなさんの要望やなぜその要望を出したのか前提となる想いや考えが表に出やすいのです。

そして気持ちと気持ちがぶつかりあってしまったり、いくら信託といえども全ての要望には応えられず、希望どうりにいかなかった人の不公平感につながってしまったりします。

当社では、信託をめぐる「人の感情」にも非常に注目をしております。代表取締役は「心理カウンセラー」の資格も取得。最大限、みなさんの気持ちに配慮しながら気持ちよく事業承継が進めよう、心理面の配慮も忘れません。

信託だけではなく、遺言や事業承継税制の活用などの技術面・そして心理面からの目線も忘れない当社にぜひご相談ください!

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