すでにあるお墓からほかのお墓などにご遺骨を移す「改葬」。2008年に約7万2000件だった全国の改葬件数は2018年には約11万5000件になりました。
少子高齢化。昔のように次世代を担う人たちがずっと地元にいられるわけではない生活環境。この増加は当然かも知れません。改装や墓じまいも終活のなかで大きなテーマの1つ。葬儀も大変ですが、ずっと長い期間にわたることをきめる改装・墓じまいの方がさらに大変かも知れません。
終活の中でも改装や墓じまいは個人の価値観が大きくでるところでもあり、また今のお墓のあるお寺さんや親族との関係に気を使ったりとデリケートな部分もあります。このページが知識を整理し、みなさまの考える一助になれればと思います。
このページの目次
改葬・墓じまいの違いはなにか?
改葬も墓じまいも、終活をする上ではよく聞く言葉かも知れません。しかしまとめて説明されることも多いため、この2つの違いが分かりにくいかも知れません。
一般的には今のお墓からどこにご遺骨をうつすかで区別することが多いようです。別のお墓などこれからも維持・管理が必要な場所に移す場合を改葬。永代供養など今後の維持・管理が必要なくなるようなケースを墓じまいと良く呼ばれます。
もともとお墓があった地元から今は離れているけど、そのままお墓の形を維持して管理したいなら改葬。維持・管理そのものが難しいようなら永代供養や納骨堂を選択することになると思います。
お墓の形式 それぞれのメリットとデメリット
ここではお墓の形式のメリットとデメリットを整理していきます。それぞれのお墓の形態の特徴を把握して、より自分の状況に合っている形態はどれなのか判断していきましょう。
1 お寺管理のお墓
ごく普通のお寺で管理お寺のメリット・デメリットは次の点が挙げられます。
メリット
精神的な安心感・満足感。子どものころから慣れ親しんだ場所にあるお墓なら、精神的な満足感や納得感は大きい。
デメリット
維持・管理やコスト面が大変。掃除などの維持・管理が必要。新しく建墓する場合は、コスト面でも負担が大きい。
2 公営団地のお墓
公営のお墓は費用面や維持・管理面のバランスは有難いのですが、人気がありすぎて新しくお墓を作るのが至難のわざです。
メリット
お寺のお墓と比較すると費用は安くなる場合が多く、また宗派を問わないのも魅力。
デメリット
都心部では人気が高く、応募してもなかなか当たらないことが多い。そもそも選択することが難しい。
3 永代供養
固有のお墓を持たないで、供養はお寺さんがしてくださる形です。
メリット
供養や維持・管理の心配がいらない。
デメリット
一定期間(30年など)たつと他の方と一緒にお墓に収められる「合葬」になる場合が多い。永代供養を選ぶとその後に改葬はできない。
4 納骨堂
永代供養と似ていますが、お骨を土に埋めるのではなくお寺のお堂で管理してもらえます。
メリット
供養や維持・管理の心配がいらない。納骨堂に納骨した後、改装することも可能。永代供養との大きな違い。
デメリット
現代的な建物の中にあることが多いため、無機質で冷たい印象を受けやすい。お盆やお彼岸など、お墓参りの時期は混みやすい。
5 樹木葬
墓石の代わりに樹木の下で眠るお墓です。近年、人気を集めています。
メリット
自然が多い場所にあるため、それが落ち着く人には良い。墓石がないため、普通のお墓より費用が抑えられる。
デメリット
アクセスが悪い場所にあることも多い。
親族やお寺さんとの話し合いは早めにはじめる・・・
改葬や墓じまいのためには、まずは永代供養先や納骨堂を探さなければならない・・・誰でもそう思いますが実はこれより先にやらなければならないことがあります。
それは親族やお寺さんとの相談です。なんといっても自分の親は兄弟の親。永代供養先などを決めた後に伝えてはやはり兄弟も抵抗を感じると思います。
お寺さんにとってもいきなり別のお墓にうつすことを伝えられるより、徐々に相談していった方が良いでしょう。改葬の手続きにはお寺さんの協力も必要です。そういう意味でも失礼にならないように、まずは改葬・墓じまいをしなければならない状況であることを伝えることからはじめましょう。
ところで改葬や墓じまいは、自分の親に終活をして欲しいときには意外といいきっかけになると思います。
「私もお兄ちゃんもお墓は見れないよ。墓じまいかなにか考えよう」といった感じで切り出せば、親本人の終活の話より切り出しやすいのではないかと思います。それをきっかけに親の老後の課題、財産管理の課題、相続の課題など徐々に話していけば、自然な流れになりやすいのではないでしょうか。
改葬・墓じまいの手続き
改葬や墓じまいをするのにも手続きが必要です。おおまかな流れを把握しておくとスムーズです。
1 改葬許可申請書を記入。
お墓がある地域の市役所で「改葬許可申請書」を入手し、記入します。
2 お寺さんなどから「埋蔵証明」をしてもらう。
改葬許可申請書の所定欄に署名と押印をいただき、埋蔵していることの証明をしてもらいます。または単独で埋蔵証明書を発行してもらっても大丈夫です。
3 移転先のお墓の管理者から「受入証明」をしてもらう。
引っ越し先のお墓から、ご遺骨を受け入れる旨の証明をしてもらいます。市役所等に提出しますが、中には必要のない自治体もあります。
4 市役所等から「改装許可証」をもらう。
埋蔵証明をしてもらった上で記入した改装許可申請書・受入証明を提出し、市役所等から「改葬許可証」を入手します。
5 ご遺骨の引っ越し
改葬許可証を今のお墓に提示し、ご遺骨を取り出し引っ越しをします。
改葬や墓じまいは、後に残される人からすると高齢の親の存命のうちに終わらせておきたいテーマです。終活の一環として考えていければ良いと思います。