「終活」という言葉と同時に「エンディングノート」という言葉も一般的になってきました。
エンディングノートは、人生の終盤に差しかかったと感じた方がこれまでの人生を振り返ったり、延命措置に関する希望や大切な人へのメッセージを残したり、通帳や不動産の権利証など財産の保管場所や財産状況を伝えたりと、とにかく自由に色んなことを書くノートです。
「こう書かなきゃダメ」という決まった型式があるわけではありません。書きたいことや「これは伝えておいた方がいいかな」というものを書いていきましょう。
このページの目次
エンディングノートと遺言の違い
さてこのエンディングノート。書くタイミングや目的は一見すると遺言ともよく似ています。しかしこの2つ全く違います。一番大きな違いはその「目的」です。
遺言はひたすら自分が亡くなった後の財産の分配に関するものだとお考え下さい(遺言で認知もできるなどの規定もありますがここではおいておきます)。そして遺言は「亡くなった後」に効力が発生します。
エンディングノートは亡くなること前のことも書きますし、自分の周囲の人に様々なことを伝えるのが主な目的なので効力が発生するかどうかがポイントになりません。そしてこれらの違いを生むには大きな根拠があります。それは民法に規定があるかどうかということ。
遺言は民法にしっかりと条文が用意されており、民法960条には「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。」と規定されております。遺言は書いて法律上の効果が発生する内容も、書き方も法律に定められており、特に書き方を間違えるとまるまる遺言が無効になってしまうことがあり得ます。
これらの違いから「財産の分配」については遺言を活用し、それ以外のことはエンディングノートを活用すると考えるのが良いと思います。
大切な人へのメッセージ。「遺言」と「エンディングノート」どちらがいい?
終活においてもしかしたら一番大事かも知れない重要ポイント。それはお身内や友人をはじめ、大切な方へのメッセージです。
終活が気持ちよく終われるかどうかはやはり自分の納得感。納得感を得るためにも伝えるべきことはきちんと伝えておきたいところです。そしてもちろんメッセージを受け取る方の気持ちにも影響を与えます。
例えば財産の分配に関する遺言だけでは納得がいかない人がいたとしても、なぜこのような分配にしたのか理由を伝えたり、また単純に自分がいなくなった後も家族仲良く暮らして欲しいと伝えるだけでもみなさんの感情がやわらかくなるかも知れません。
やっぱり人間、最後はお金じゃなくて気持ちだと思います。遺言やエンディングノートに抵抗がある人でも、この部分だけでも書き残してみたらいかがでしょうか。この大切な人へのメッセージ。エンディングノートに書くこともできれば遺言に書くこともできます。
遺言の場合は「付記」といって法律的な効果はありませんが、当然遺言を残した相手に読んでもらうことができます。どちらに書くかで違いや向き不向きはあるのでしょうか。この点、特に決まった正解ありません。ただ強いていうならエンディングノートがおすすめかなと思います。
遺言のうち一番メジャーな公正証書遺言は手書きで書けないため、なんというかあんまり雰囲気が出ません。自由度の高さや手書きで書けること、手軽さからエンディングノートの方が良いかなと思います。
ただ遺言しか作らない方は当然に遺言に書くでしょうし、終活にこうしなきゃいけないという固められたルールはありません。状況に応じて判断するのが良いと思います。
エンディングノートには何を書く?
大切な人へのメッセージ以外に、エンディングノートにはどんなことを書くのでしょうか?例をあげていきましょう
今の自分の健康状態やかかりつけの病院、飲んでいる薬やお薬手帳の保管場所
健康状態の悪化などで、自分で病院に向かえないことに備えます。エンディングノートに残すと同時に、できればご家族など身近な方にも常日頃から把握してもらうようにすると良いでしょう。
保険について
加入している生命保険などについてまとめて一覧表にできると良いでしょう。財産に関することは極力遺言に書いた方が良いと思いますが、生命保険は受取人によっては民法上、相続財産とみなされません。
つまり遺言に書くにはなじまないことも考えられます。受取人になる人が保険の存在を把握できておらず請求漏れになってしまってはあまりにももったいないのでまとめると良いと思います。
終末期医療について
いわゆる「延命措置」をのぞむかどうかです。尊厳死宣言公正証書など他の場面で意思表示しない限り、なるべくなら触れておいた方がいいでしょう。ただこれは考えるのも辛いですよね・・。
一口に「延命措置」と言っても胃ろうや器官切開など色々あります。そんなに具体的でなくても「回復もできない、意思表示もできない状態になったら自然に任せて欲しい」。これくらいでもいいと思います。
終末期医療に関することはなにか残っていると、あなた自身が判断ができない状態になったとき、まわりの人の判断に参考になります。でも今のあなたが快適に暮らすことが何より大事なので、「書けそうなときは」書いておくと良いと思います。
友人・知人の連絡先等
あなたにもしものことがあったとき、連絡して欲しい友人や知人、その人との関係性をリスト化しておくとよいと思います。あなたも自分のことを大切な人に知らせることができますし、葬儀をするお身内の方も助かるでしょう。
ポイントは「関係性と簡単なエピソードを書くこと」。学生のときの同級生だとか、元会社の同僚だとか関係性が分かり、更に「若いときに互いに励ましあって仕事をした」とかエピソードがあれば親族の方がその方と連絡を取るとき作業的にも心理的にも負担が減ります。
葬儀やお墓、法要について
墓じまいは近年どこの家庭でも大きなテーマの1つです。菩提寺や既に亡くなった後の供養をお願いしているお寺さんなどがあればそちらの連絡先、自分が管理している先祖のお墓があれば今後どうしていくのかなど書き残しておきましょう。
不動産、預貯金、株などの財産に関することは・・・・
財産に関することももちろんエンディングノートの内容になっておかしくない1つです。というよりも「財産に関することがメインなのでは」と考える方もいるでしょう。
しかしエンディングノートで財産の目録を残すのはともかく、分配に関することはむしろ書かない方がいいかも知れません。なぜならば遺言のように明確な法的拘束力があるとは言えないため「有効か無効か」の争いのポイントになってしまうかも知れないからです。
これも様々なケースや状況がありますので、ご自身の状態に合わせて考えていく必要があります。
ここに書いたのはあくまで一例です。書いておきたいこと、書いた方が役に立つと思うこと、終活に向けて気になったことはどんどん書いていきましょう!
書けるとこからのんびり気楽に!
エンディングノートと遺言の違いをあなたの気持ちの面から考えてみます。
遺言は財産の分配の関することがメインですが、エンディングノートは記載内容によってはあなたの人生を振り返る効果も持ちます。また終末期治療や延命措置は自分の最後に向けてあるリアルに考えていく作業になります。
これは人によっては思い出したくないことを思い出してしまったり、先のことを考えるのを辛くなったりするかも知れません。そういう場合は無理をする必要はありません。完璧なエンディングノートを作る必要な無いのです。書けそうなところから、のんびりと自分のペースで進めていきましょう!
また「書きたいけどなかなか取り組めない」という人は「将来、起きてしまったら嫌なこと」を考えてみると良いかも知れません。その状態を防ぐため、きっとエンディングノートが役に立つことでしょう。防ぎたいことを洗い出してそこをピンポイントで狙うのも方法の1つです。
エンディングノートを親に書いてもらうには?
さてこのエンディングノート。終活の基本とあって自分の両親やおじさん、おばさんに書いておいて欲しいと思う方もたくさんいらっしゃいます。
しかし肝心の本人が面倒くさがったり、将来困ることに自覚がなかったりする・・・。あげくの果てには「自分が困らないことしか考えてないのか!」とかいって怒りだしてしまうこともあります。なんとか上手にご両親たちにエンディングノートを書いてもらう方法はないのでしょうか。
1つ大事なことは「少しでも本人の興味のあることからはじめる」ことです。親と子では関心ごとが違ったりします。親は認知症になった時の心配が大きいが子どもは単純に財産が目録かされて整理されていることに関心がある。こんな風に関心がずれる場合はまず親の関心ごとを優先し、そこから整理をつけましょう。
理由は3つ。
1つ目はやはり本人の問題なので本人の興味があることから優先することは筋道にかなってます。
2つ目は自分の興味のある問題が解決しないと他のことに関心がうつりにくいためです。
そして3つ目、自分の話を聞いてもらったことにより「承認欲求」がある程度満たされて満足感を得ることができ、次にあなたが関心がある話を聞いてもらいやすくなります。
ただ、もしうまくいかずエンディングノートを書いてもらえない時は、無理をする必要なないと思います。それがきっかけで関係が悪くなっても良くないですしうまく進まないことであなた自身のストレスになってしまいます。
「もし準備できないときは仕方ない、相続発生後によ~いドンではじめよう」それくらいの楽な気持ちでいていただくのが良いのではないかなと思います。
終活におけるエンディングノートの必要性
ここまで読んでいただいてもしかしたらお気づきになったかも知れません。
エンディングノートは遺言と違い、必ずしも完成させる必要はないのです。書くことで自分の健康、財産、状況・・・色んなものが整理されます。この整理がつくのも大きなエンディングノートのメリット。整理されればそれは終活をする上で頼もしい地図になります。