将来の認知症対策や相続対策などで多くのご家庭で検討されるようになった信託。当社では代表が司法書士であることからその知識と経験を活かし、信託だけでなく遺言・任意後見・死後事務委任契約などからその方の実情にあった認知症対策・相続対策を一緒に考え、提案しています。信託の特徴は「総合力」。認知症対策や相続対策を一括で総合的に進めることができます。このような守備範囲の広さから選ばれることも多い信託ですが、実は意外な課題もあります。それは法律的な問題だけでなく心理的な部分も多い問題。実際に実務を多く経験している司法書士でもある代表者が、現実に起こる信託の問題についてお話します。
このページの目次
信託エピソード「お金をとられる!」
お母さまの認知症対策として、娘さんから遺言と信託の相談を受けた時のことからです。ご家族の考えやご家庭の状況を良く伺い、それを踏まえて遺言・任意後見・死後事務委任契約・信託のメリット・デメリットについて説明しました。ご家族から特に認知症対策が重要な自宅について信託、それ預貯金や有価証券などの財産は信託よりも、遺言で対応することになりました。
信託で浮き彫りになった意外な課題
まずは遺言を作成し、次に信託に取り掛かりました。ここで意外な課題が持ち上がります。それは信託の対象とする現金でした。このご家庭における相続対策では、預貯金が遺言をメインで対応します。しかし、通常は信託で金銭がゼロということもありません。このご家庭の信託ではご自宅が対象財産の中心ですが、不動産の管理のためにも一定の金銭は信託の対象とするべきでした。しかしここで問題が起こりました。金銭を信託の対象とするということは、預貯金をご本人の口座から信託財産管理用の口座に移すということです。このお金を移す作業をすることが信託契約書の作成が進み、私がご家族のみなさんへの説明を進めるに連れ、臨場感をもってお母様が強く認識をされました。そうするといつのまにかお母様の認識が「娘にお金をとられる!」に変わっていきました。思えば遺言の作成をしたときも、少しその兆候はありました。「遺言を作成するとそのに書いたお金については使えなくなるのですか?」と2回ほど質問を受けました。その時は「そんなことはありません。遺言が効果を発揮するのは相続発生後です。もしも相続発生後に書いてある財産が無くなった場合はその部分の効果が無くなるだけで、遺言に書いたからと言ってその財産を使ったり売ったりすることに全く制限はありません」と説明をしてきました。その時にもう少し相続対策によって自分の預貯金が失われるという不安にしっかり対処しておくべきだったと反省もしました。
実際に信託をするということは財産を失うことなのか?
では預貯金を信託したり、不動産を信託することは本当に財産を失うことなのでしょうか。そうではありません。よく信託では「受託者に所有権は移転するが受託者固有の財産になるのではない」と表現されます。聞きなれない言い回しですが後半の「受託者固有の財産になるのではない」という部分に注目して頂きたいと思います。まず受託者というのは財産を管理する人とお考えください。今回紹介したケースでは受託者になるのは娘さんでした。娘さんはお母さんの信託の対象となった財産を管理します。ここでポイントとなるのはその管理方法です。この管理方法が信託の最大の特徴とも言えるかも知れません。財産を管理するということは、財産を預ける方以外の第三者とのやりとりも出てきます。信託財産となった預貯金で必要な支払いを済ませたり、自宅不動産の庭の剪定をしたり、介護施設に入居する時などは売却する権限も持ちます。例えば自宅を売却する場合は、「私が管理しています」といってもその不動産の名義(登記)が本人のままだったらどうでしょうか。相手はあなたが管理者だからといって名義を移す以上、本人に本当に売却する意思があるのか確認しなければなりません。その時、もしもご本人が認知症になっていたら判断能力がなく、意思も確認できないと受け止められ必要な売却が出来なくなってしまいます。そこで信託では「管理のために」「所有権を移転する」のです。受託者に所有権を移転することで売却する時購入者は、受託者から不動産の譲渡を受けることができるようになり、本人に認知症になっていても対応ができるようになるのです。このように所有権を移転することはスムーズな管理や処分のため、必要なことです。しかし所有権を移すと言っても受託者の「固有」の財産となるわけではありません。この言い回しが分かりにくく微妙なのですが要は自分の財産ではないということです。もちろん、自分のために使うことはできません。自分個人の財産とは分けて口座を用意し、決して自分の財産とは混ざらないようにします。そして、その財産を本人のためだけに使います。つまりとられるわけでは全くありません。
司法書士からご本人への説明
上に書いたようなことについて、ゆっくりとご本人に説明をしました。信。託の対象とする金銭が比較的少なかったこともあり、納得をいただけました。そして、この信託の財産管理について説明をしている時、もしかしたらお金をとられるという不安は本質ではないのかなと感じたことがあったのです。
ご本人の本当の想い
ご本人への説明は、娘さんの仕事の都合もあって私1人で行いました。そうすると、少しご本人から雑談めいた話もしてくれました。その中に「娘は相続だとか何か用がある時しか連絡をくれない」といった話やご本人が現役でお仕事をしていた時の話などがありました。そうした話を伺っているうちに、ひょっとしてお金をとられる不信感というより、娘さんとコミュニケーションの糸口を探しているような気がしてきました。遺言、信託と続いたため今回の相続手続きはそれなりに長期に及びました。しかし遺言は順調に終わり、信託もスムーズに進むとそう遠くないうちに終わります。そうすると、おそらくまた娘さんからの連絡の頻度はグンと下がるでしょう。本当にお金をとられると思っているというより、娘さんとのコミュニケーションの材料が無くなってしまうのが寂しいのではないかと感じました。そのため第三者の私が2人で説明するとあっさりとご理解をいただけたような気がします。というより最初から理解はしていたものの娘さんにはどうしても素直になれなかったりなるべく長い間話をしたかっただけのように思います。もしかしたら、娘さんもその事を分かって、仕事もあったのでしょうが説明を私に託したのかも知れません。
普段のコミュニケーションがスムーズな認知症・相続対策につながる
今回のケースでは、もしかしたら普段からのあんまり中身はない電話での雑談などで、もっとスムーズに進められたかも知れません。現役社会人は忙しいし、仕事で頭がいっぱいになりがちです。私も全く人のことはいえないのですが、少し自分が落ち着いた時間で5分、10分の電話をするだけで違うのかも知れません。
信託・遺言などの認知症と相続対策はタケミ・コンサルティングへ!
今日は司法書士として経験した信託のエピソードについてお話ししました。タケミ・コンサルティングは司法書士だけだと相談していいか皆様が迷われることもお手伝いしたいとう考えから設立しました。司法書士や宅地建物取引士としての経験を活かし、俯瞰した目線でみなさまのご相談にのぅていきます。士業としてのネットワークから皆様に必要な対策を各種の専門家と連携して進めていきます。どうぞお気軽にご相談ください。
お問い合わせ | 相続・生前対策や事業承継、M&Aのご相談なら【株式会社タケミ・コンサルティング】にお任せください
対応エリアも会社のある世田谷区だけでなく北区・葛飾区・江東区などの東京23区や相模原、川崎、横浜、柏、さいたま市などの首都圏でご相談を承っております。どうぞお気軽にご相談ください!
対応エリア | 相続・生前対策や事業承継、M&Aのご相談なら【株式会社タケミ・コンサルティング】にお任せください

東京都世田谷区北沢にある株式会社タケミ・コンサルティングは、相続や事業承継、M&Aのコンサルティングを行っています。代表の竹内友章は、司法書士事務所「下北沢司法書士事務所」の代表も務めており、相続や生前対策、事業承継のサポートを提供しています。また、上級心理カウンセラーの資格も持ち、相談者様の心情に寄り添った対応を心掛けています。終活・生前対策、相続や事業承継に関するお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
